2023-08-08
中小企業において資金繰りのため、経営者や知人よりお金を借り入れることが多いと思われます。また、その中には自己資本比率の向上や相続対策のため、借入金を債務免除してもらうケースもあります。今回では、債務免除の税法上の扱いと手続きについてご紹介します。
債務免除は、借金や負債を完全に放棄することを指します。これは、債務者に対して債権者が借金の返済を免除することで実現されます。債務免除はいくつかの方法で実現される場合があります。例えば、債務者が破産手続きを行い、破産宣告を受けることで債務免除を受けることがあります。また、債務者と債権者の間で交渉が行われ、債務免除の合意が成立する場合もあります。
・債権側
一般的には、債務の免除は一方的な意思表示によって無償で債務を消滅させる債権者の単独行為である。確実な方法として、「債務免除通知書」を内容証明郵便と併せて、同一内容の特定記録郵便を送付した方がいいでしょう。
・債務側
会社側にとって債務免除は、特別利益として「債務免除益」として仕訳をすることが必要です。
・原則的な課税関係
法人税法上は、会社側からみれば債務免除は無償により資産の譲受けになりため、当該事業年度の収益として事業の収益と合算して法人税を計算することになります。
債務免除益は繰越損失を超過した分について法人税の対象になるので、この債務免除益は繰越損失を考慮し、債務免除金額を調整したほうがいいといえるでしょう。ただ、債務免除による収益は、消費税の対象ではないため、債務免除側、債務放棄側にいずれにおいても消費税の支払いは不要です。
・容認的な課税関係
経営者の私財提供に係る特例
中小企業に対する再生計画策定支援等の中小企業再生支援業務を実施するため、令和4年度の税制改正により、令和7年3月31日まで「合理的な再生計画」に基づき、再生企業の保証人となっている経営者からの債務免除を非課税になるとこができます。
・企業再生税制
迅速な企業再生を支援する観点から、企業再生税制があります。企業再生税制上、企業が債務免除を受ける場合は、「合理的な再建計画に基づくもの」であれば期限切れの欠損金も損金として算入することができます。しかし、「合理的な再生計画に基づくもの」として税務上認められるので、該当するか否やなどについて税理士に相談した方がよいでしょう。
債務免除を受けた際、経営者が株主である場合は、贈与の問題は生じませんが、経営者以外の株主がいる場合は、その免除額をほかの株主にとって「みなし贈与」とみなすことで贈与税の納付が必要になることがあります。
債務免除された金額が大きく、結果的に会社の純資産が増加してしまう場合は株式にも価値が生まれ、株価の増加があったと考えられます。つまり、他の株主にとっては間接的に贈与されたとみなされ、贈与税が発生してしまいます。
他の株主に負担を増やさないためにも、会社の繰越損失、債務超過額など全体的に考慮し、債務免除する金額や時期を決定することも必要といえるでしょう。
<参照リンク>
・国税庁 法令解釈通達 第7款 その他の収益等
・国税庁 タックスアンサー No.4424 債務免除等を受けた場合
・国税庁 タックスアンサー No.5320 貸倒損失として処理できる場合
・中小企業活性化協議会の「中小企業活性化協議会実施基本要領」に基づき策定された再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて
・民事再生法の法的整理に準じた私的整理とは
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