2023-01-14
昨年12月23日に、令和5年度税制改正の大綱が閣議決定されました。
本記事では上記決定のうち、資産課税関連から生前贈与に係る改正点を一部取り上げます。
今回の改正点の目玉は、相続時精算課税制度の利便性向上ではないでしょうか。
一方、暦年贈与の節税効果は少し低減するようです。
※暦年贈与と相続時精算課税制度については、過去記事「生前贈与とは」もよろしければご参照下さい。
相続税とは基本的に、被相続人の「死亡時に所持していた財産」に課税されます。
亡くなる前に贈与を行い、相続財産を減らすことは、相続税を節税することに繋がります。
暦年贈与の場合、年間110万円の基礎控除があり、1年間に110万円以内の贈与であれば贈与税がかからず、長年、暦年贈与を行うことで相続財産を減らしてゆくのが相続税の節税において定番の方法です。
この生前贈与には、被相続人の死亡前3年以内の贈与については相続財産に持ち戻す(相続財産に合算する)というルールがあります。
今回の改正で、このルールが死亡前7年に延長されることとなりました。
ただし、延長される4年間の分は、総額100万円まで相続財産に加算されません。
例をあげると、110万円の暦年贈与を毎年行っていた場合、現行ルールであれば死亡前3年間の330万円分が相続財産に合算されるところ、新ルールではさらに4年遡及して追加で340万円分(440万円-控除100万円)、計670万円分が合算されるイメージです。
加算期間は段階的に延長されるため、7年間の加算となるのは、令和13年1月1日以後に開始する相続からとなりますが、暦年課税によって相続税の節税を試みる場合は、より一層早期から贈与の開始を検討する必要があるといえるでしょう。
相続時精算課税制度は、父母・祖父母から子・孫に対する贈与の累計2500万円まで贈与税を非課税とし、相続開始時に合算して課税額を計算する制度で、端的にいうと、相続開始まで税金の納付を先送りする制度です。
暦年贈与には年間110万円までの基礎控除がある一方、相続時精算課税制度にはそのような控除が無い上に暦年贈与との併用もできず、少額の贈与でも税務署に申告する義務が生じるため、利便性が高いとは言えませんでした。
しかし、今回の改正で、暦年課税制度と同水準の基礎控除110万円が創設され、少額贈与については申告不要(持ち戻しなし)となるようです。
また、本制度を利用した場合の相続時の価額計算は贈与時の評価額で計算されることから、相続時の時価が贈与時の時価を上回る場合、節税効果が高いと言われていた一方、当然ながら相続時の時価が贈与時の時価を下回るリスクもありました。
今回の改正では、そのリスクも一部手当されることとなりました。
それが、贈与された不動産が災害によって被害を受けた場合の課税価格の再計算です。
通常、相続時精算課税制度の元で贈与された財産の価額は贈与時点の時価で固定されますが、土地建物について災害により一定以上の被害を受けた場合には、例外的に相続税の課税価格を再計算できることとなります。
以上のように、改正によって相続時精算課税制度の利便性が向上することは間違いないと思いますが、相続時精算課税制度を利用して土地の贈与を受けた場合、その土地においては小規模宅地等の特例を適用できない等、様々な留意点も存在します。
また、資産課税関連の改正は上記以外にも、非課税特例の期間延長などもありますので、相続・贈与に関しては早い段階で専門家に相談し、包括的なアドバイスを受けることを推奨致します。
<参照リンク>
財務省 令和5年度 税制改正の大綱の概要
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2023/05taikou_gaiyou.pdf
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